あのハイエースがなぜAnycaランキング1位を取ったのか?競合が少ない客層を掴んだ男の戦略
Anycaユーザーのリアルな声を聞くことで、未来のAnycaユーザーに有益な情報をお届けする連載「クルマ好き記者鈴木GO太郎の、賢者のカーシェア術」。
今回登場していただくのは、ハイエースを24時間14,800円(平日13,000円)でシェアしている笹野氏(30代・東京都在住・Anyca歴7ヶ月)。
2016年11月に愛車を登録して以来、シェアのリクエストが入ったのは約30回。1ヶ月4〜5回ほど安定してリクエストが入っている笹野氏だが、彼は本連載でこれまで紹介してきたオーナーと大きく異なる点がある。
それは、彼の居住地だ。
これまで紹介してきたオーナーは、みな新宿や渋谷、池袋など都心の主要駅を受け渡し場所に設定していた。
だが、笹野氏が住むのは東京都北東部に位置する足立区。最寄り駅は日暮里駅から乗り換える日暮里舎人ライナー沿線だ。
正直、決してシェアされやすい立地とは言えないのだ。
だが、笹野氏のクルマは安定してシェアのリクエストが入り、8月にはランキング1位にも輝いている。
いったい、彼のクルマはなぜここまでシェアされるのだろうか。
その秘密を丁寧に明らかにしていこう。
1:もっと家族旅行をしたいから車中泊。僕がハイエースを選んだワケ
2:Anycaで維持費を賄うことを前提にクルマを買ったら……
3:足立区在住。最寄り駅は日暮里舎人ライナー。それでもリクエストが入る理由
4:住む場所は変えられないけど、シェアする人は選べる
5:未来のAnycaオーナーに伝えたいこと
◆1:もっと家族旅行をしたいから車中泊。僕がハイエースを選んだワケ
まずこちらの笹野氏のハイエース、普通のクルマとはかなり変わっていることを紹介したい。
外観は何の変哲もないクルマだが、後席のスライドドアを開けると……
そこにはクルマというより、家族で団欒できそうな”部屋”が現れた。
「全部で10人乗りです。大丈夫ですよ! ちゃんとシートベルトも付いていますし、車検も通ってます」
なぜこのクルマを選んだのでしょう?
「いま、子供が3人いて5人家族です。なので、たくさん人と荷物を載せられるクルマが欲しかったんです。それに加えて4年ほど前から家族でキャンプに出かけるのにハマっていて、キャンピングカーが欲しくなったんです。家族で遠方に旅行する際に車中泊すればホテル代が浮くじゃないですか。そこでキャンピングカーを色々見て回ったのですが、値段はどれも400万円は下らない。これでは買えないということで色々検討した結果、見つけ出したのがこのハイエースでした」
なるほど。5人家族ならば旅費もバカにならない。一人一泊5,000円としても25,000円。これが丸々浮くのは大きい。
でもまさか、新車のハイエースを買って車中泊できるようにここまでカスタムしたってことですか? それでは予算オーバーでは?
「いえいえ。ハイエースとは言っても、こちらはALFLEX(アルフレックス)というメーカーがここまでカスタムして売っているクルマです。車名もついていて、”オペラ”と言います。それを中古車屋さんで買いました」
購入時の中古車価格は330万円(販売時価格は450万円)。予算はややオーバー気味だったが、それでも笹野さんが購入を決めたのは、このクルマを買う時期にAnycaがすでに登場していたからに他ならない。
◆2:Anycaで維持費を賄うことを前提にクルマを買ったら……
「これまで、ホンダのエアウェイブとかワゴン車を色々乗ってきた後に、中古でマツダのMPVを120万円で買ったのが5年前。実は、いまも日常の足として使っているんですよ」
え? てことは、クルマを2台お持ちってことですか?
「はい。なので、ハイエースはAnycaでシェアしないと維持費が賄えないんですよ。ネットでAnycaの存在を知って、ここでシェアすれば維持費もなんとかなるだろうと皮算用してハイエースを買ったんです。2015年くらいから日本のキャンプ市場が伸びていたのもあって、それならシェアリクエストも入るだろうということで決めたんです。シェア料金は、14,800円に設定しました。」
こうして”特殊”なハイエースをAnycaでシェアし始めた笹野さん。
結果はすぐに現れた。
「月に4〜5回リクエストが入るのですが、1日(24時間)ではなく2日(48時間)のリクエストが大半でしたね。もっとも多いのは、金曜夜から利用して日曜の夜に返すパターン。2日(48時間)利用なのでそれだけで30,000円弱の収入です。かなり維持費に賄うのに貢献していますね。特にランキング1位になった8月の予約はすごかったです。毎日のようにメッセージが届くので、『ああ、ランキング上位の方はこんなに大変なのか……』と実感しました」
「正直、仕事より忙しかったかもしれません」と笹野氏。一見、ドライバー側にとっては2日で30,000円というシェア料金は高く思われがちだ。
だが、10人で乗って割り勘した場合、一人あたりたった3,000円。大人数で割り勘されることを前提にシェア料金を設定すれば、高めの料金設定でもリクエストが入るのだ。
「後から気づいたのですが、普通のキャンピングカーを買っていたら、8ナンバー車でAnycaに登録できなかったんですよ。なので、3ナンバーのキャンピングカーのハイエースにして大正解でした。それと今後車検登録されるリアシートが横向き座席タイプのハイエースもAnycaではシェアできないようです。ラッキーでしたね」
◆3:最寄り駅は日暮里舎人ライナー。それでもリクエストが入る理由
そんな笹野さんのハイエース、実は遠方からのリクエストが多いのだとか。Anycaを始めるオーナーの中には、近隣住民からのシェアリクエストを期待して、ドライバーのお得意さんを作る戦略を考えている人も多いかもしれない。
だが……。
「近所からのリクエストは全然ないですね。逆に東京の西部や神奈川の方に住んでいる人からリクエストが多い。受け渡し場所は日暮里舎人ライナーの駅の場合もありますが、大半は山手線の西日暮里駅。どうやら、遠方の方でも山手線の駅を指定すればある程度OKなことがわかったので、都心に住んでいる方ならば受け渡し場所に山手線の駅を加えておくといいかもしれません」
笹野氏曰く、山手線の駅ならば、多少遠くとも心理的に近く感じるのではないかとのことだ。
◆リクエストが多いのは学生と意外な人たち
笹野氏のハイエースは10人で乗れば一人3,000円ということもあり、ドライバーは20代がメイン。旅費を少額で抑えたい学生が大勢で旅行に出かける際に使われることが多いという。
だが、ドライバーは若者だけではない。他にも意外な層からのリクエストが入るのだという。
「外国の方が多いんですよ。中国や台湾、韓国……最近ではスリランカやインドの方からもリクエストが入りましたね」
なんと! Anycaがそこまでグローバル化していたとは!
でも、素朴な疑問が。Anycaのクルマって外国の方も利用できるの? その前にアプリ上での日本語のやりとりは大丈夫?
「大丈夫ですよ。みんな5〜6年は日本に住んでいる方なので、何の問題もなく日本語で会話できます。むしろ彼らのほうが過剰なほどやりとりが丁寧です(笑) 国際免許ではなく、ちゃんと日本の自動車免許を取得済みですし、日本人と何も変わらないです。面白いのは、海外のほうがシェアリングエコノミーが普及しているからか、Anycaを使うのに慣れていること。彼らは他のシェアサービスも使っているのかな」
笹野氏が外国人とのやりとりで心がけている点は、彼らにわかるようになるべく漢字を使わず、簡潔にメッセージを送ること。
「用途は外国人も日本人も一緒。大人数で一泊旅行に出かけるために使うケースが多いです 。車中泊できるのですが、キャンプに使った方は少ないですね」
◆一泊旅行で使われるクルマならば距離制限はなくせ
ここまで特殊なクルマを持っていれば、シェアされるのも当然だろうと考える人も多いかもしれない。
だが笹野氏、リクエストが殺到しているのはこれだけが理由ではない。他にも彼は様々な工夫を施していた。
「僕のハイエースは車中泊できるので、遠くに出かける可能性が高い。となると、距離制限はないほうがいい。事実、過去のドライバーさんには岐阜の郡上八幡の盆踊りに参加したいという人や、実家の滋賀への帰省に使ったという方もいました。返却時にメーターが1,000km伸びてることもありましたが、全然気にしてないです。今後もハイエースを売る気はないですし、Anycaは愛車のパートナーみたいなものなので、ずっと登録し続けます」
購入時56,000kmだったメーターは、購入から1年で76,000kmまで伸びた。もちろん、これは笹野氏一人で利用していたとすればまず出なかった距離だ。
◆Anycaで最適なトップ画像はクルマの外観とは限らない
さらにプロフィールにもこんな工夫が。
「あとは、画像ですね。あえて車内の写真をトップにしています。 このクルマの最も特徴的な写真をアップした方が手を止めて見てもらえますから。内装がオシャレなクルマに乗っている人は車内の写真をトップページに置いたほうが見てもらえますよ」
そんな様々な工夫を凝らしていることもあり、笹野さんのハイエースは人気輸入車や格安ミニバンがランキング上位に名を連ねる中、見事1位を獲得しているのだ。
◆4:住む場所は自由に変えられないけど、シェアする人は選べる
以上、様々な戦略により多くのシェアリクエストが入る笹野氏のハイエース。
今回彼に話を聞いた中で、もっとも印象的だったのは次の言葉だった。
「どんな人であろうと、ドライバーがちゃんといることが大事です。僕の場合、当初想定していなかった遠方に住む学生さんや外国の方からのリクエストが多く入りました。立地的にはかなり不利でしたが、少数派でも誰かのニーズにしっかり応えられているのが強みなのだと思います。
実は、これまでシェア中に事故に遭ってしまいました。が、Anycaの修理サポートの対応がよかったこともあり、今後もシェアは続けるつもりです。他にも過去、返却時に渋滞などで遅れたり、シェア当日の待ち合わせ時刻に『いま、起床しました・・・』という遅刻の報告を受けるトラブルに遭うこともありました。でも、それはこちらがお金をいただいている以上、多少は仕方がないと思っています。あくまでドライバーさんがいてこそ、このハイエースを持てるんです」
結婚と育児を機に、それまで縁もゆかりもなかった今の場所に引っ越した笹野氏。周囲は舎人公園や荒川など自然環境豊かで子育てにはとても向いている場所だが、Anycaのシェアリクエストが入りやすい渋谷周辺からは離れているのは否めない。
だが、現在も彼はAnycaでクルマの維持費を賄えている。
住む場所は変えられないが、シェアする人は選べる。だからこそ、Anycaでシェアすることを前提にクルマを買う場合は、「誰に利用されるか」「どんな使われ方をしてほしいか」を想定しながらクルマを購入するのがよいのかもしれない。
【笹野氏が説くシェアされやすいクルマの3箇条】
1:住む場所は変えられない。だが、誰にシェアするかを考えれば希望アリ!
→”大人数で乗れるクルマ”ならば多少遠方からでもリクエストが入る。また、外国人や学生のように意外なターゲットを設定するのもアリ。
2:トップ写真はクルマの外観がよいとは限らない。”最も特徴的な写真”を設定せよ!
→内装がおしゃれなクルマなら内装を、キャンプ道具を貸し出せるクルマならばキャンプ道具が入ったトランクなど、ドライバーが気になってタップしたくなる写真を設定せよ。
3:受け渡し場所に山手線駅を入れておけ!(首都圏在住者)
→多少受け渡し場所が遠くても山手線駅ならばドライバーは心理的にリクエストを検討してくれる。シェアリクエストの多い新宿区〜渋谷区近辺在住でなくても諦めないこと。
<取材・文/鈴木GO太郎>
鈴木GO太郎…ライター・編集者。出版社勤務を経て、2015年フリーに。現在はビジネス誌やネットニュースの編集を行う。専門分野は、自動車、不動産、地理。特に自動車についてはAnycaのような「新しいカービジネス」が専門分野