BMWi3はなぜシェアが殺到したのか?購入時から考え抜かれたカーシェアの”成功法則”
Anyca利用者のリアルな声を聞くことで、未来のAnyca利用者に有益な情報をお届けする連載「クルマ好き記者鈴木GO太郎の、賢者のカーシェア術」。
今回登場していただくのは、BMWの電気自動車i3を平日6,900円でシェアしている岩村さん(30代・東京都在住・Anyca歴1年)。
現在は月に3〜4回のリクエストが入り、約30,000円のシェア収入を得ている岩村さん。2017年5月にAnycaを始めて以来、順調にリクエストの数を伸ばしてきたという。
岩村さんのスゴいところは、何と言ってもとにかく試す、試す、試す……と実験を繰り返すところ。
その試行錯誤の結果到達した彼なりの”正解”は、シェアを検討している未来のオーナーにも間違いなくためになるものだろう。
1:「最初はカイエンをシェアしようと思っていた」
2:Anycaのために20万円かけて庭を改造、ビラも500枚配った
3:幾多の実験でわかった”シェアされる法則”
4:”近くで割引”は効果がない !?
5:アピール文と写真は工夫するほど効果がある
6:オーナーにはこれを試してほしい
最後に:Anycaを始めてから気づいた価値
1:「最初はカイエンをシェアしようと思っていた」
実は、最初からi3を購入するつもりではなかったという岩村さん。
「Anycaでシェアすることを前提にしてクルマを買おうと思い、ざっとランキングを見てみたところ、ポルシェのカイエンが目立ってたんです。かっこいいし、最初はカイエンをシェアしようと思っていたのですが、試しに一度Anycaでドライバーとして利用してみたら、私にとってカイエンは大きすぎることがわかりました。さらに調べてみたら、維持費も結構高いことがわかって断念しました。」
岩村さんが購入を検討したカイエンの自動車税は年間88,000円。10年落ちのモデルなら200万円前後で買えるが、パーツ代も含め、買った後の維持費がかかることがネックとなった。
こうして、Anycaでのシェアを前提としたクルマ探しは一旦ふりだしに戻る形に。
続いて彼が目をつけたのが電気自動車だった。
当時、岩村さんは最先端のエネルギー業界の会社に転職したばかり。そこで、仕事との親和性もあるので当時Anycaでは珍しかった電気自動車はどうかな、と考えてみたという。
「エネルギーの未来を体験できるクルマがいいんじゃないかと思って。最初に見たのは日産リーフ。でも、これは街中で見かけることも少なくないし、100%電気自動車なのは充電スポットがないときに不安。諸々考慮した結果、そんな不安要素をすべて解消してくれたのがBMWのi3だったんです」
岩村さんの考えはこうだ。
AnycaではBMWを始めとした高級輸入車メーカーのクルマが上位にランクインしている。特にBMWはAnycaでも人気のメーカーだ。さらにi3ならばガソリンと電気の2つのエネルギーで走れるので、電気が切れたときもガソリンで走れるので安心。加えて、シェアしたドライバーにとっても実質的にガソリン代がかからないのも評価されると思ったのだ。何より他と被らないのもよい。
そんな岩村さんの目論見は大正解だった。
「シェアしてみると、ドライバーさんからはガソリン代がかからないことが好評でした。他の高級車はハイオクなのでシェア料金が安くても結果的にコストがかかる。それに、車内が静かなので同乗した女性からも好評だったという声も多かったですね。」
さらに、クルマをシェアするオーナーとしても購入後の維持費が安く済んだのもよかったという。
「認定中古車として約300万円で買ったのですが、ガソリンは1000cc以下扱いなので自動車税は年間29,500円ですが、減税によって実質ゼロ。充電代も深夜に充電すれば、電力自由化のおかげで昼間よりも安く賄えます。満タン充電で電気代はたったの300円。これで130km走れます!」
なんと、燃費換算すると1Lで約90km! 通常、ハイブリッド車で1Lの燃費が20〜30kmなのでコストが圧倒的に安いのは言うまでもない。
2:Anycaのために20万円かけて庭を改造、ビラも500枚配った
こうしてシェアを開始し、現在は20件のレビューがつくまでに。シェアを重ねるごとに傾向が見えてきたという。
「新規の方が70%くらい、リピーターは30%くらいですね。i3をドライバー利用したい人は、”狙い撃ち”で来ている人が大半。BMWの電気自動車に乗るために、埼玉や茨城などの遠方からリクエストが入ることも珍しくありません。」
クルマを購入した時点でかなりの熱意があった岩村さんだが、シェアを開始してからも自ら進んで様々な行動を起こした。
なんと、i3の購入にあたって自宅にあった庭を駐車場に変えてしまったのだ。
「月極の駐車場を借りることもできましたが、20万円かけて駐車場にしました。自宅から充電できるようにするためです。妻からは猛反発されましたが(笑)。それに自宅受け渡しならば妻が対応できるじゃないですか!」
BMWを選んだのも、i3を選んだのも、さらには自宅の庭を駐車場に変えたのも、すべてはAnycaを始めることを前提にした決断。
岩村さん、なんという熱量!
さらにさらに……。
「ご近所のお得意さんを増やそうと思って、Anycaのビラを自作して近所に500枚ポスティングしました!」
これまたすごい熱量!
だが、蓋を開けてみるとご近所さんからのリクエストはほとんど入らなかった。
なぜ?
「ご近所さんからのシェアリクエスト狙いなら、クセのないミニバンが向いているのかもしれませんね。やはりi3はそのクルマに乗りたい人が乗るクルマ。場所はあまり関係ないようです。」
3:幾多の料金実験でわかった”シェアされる法則”
他とクルマと被らないクルマ選びに加え、近所への自発的なポスティングなど様々な工夫を施した岩村さん。シェア料金にもいくつかの実験を試みていた。
「まずはたくさんの人にシェアしてレビューを増やそうと思ったんです。2017年5月当時、AnycaのBMWのシェア料金相場は10,000円前後。そこで相場より安めのシェア料金6,900円からスタートさせました。」
それから徐々に料金をあげていき、8,900円まで上げたところ、ピタッとリクエストが止まった。
やはり、料金は関係ある。そう思い、今度は徐々に料金を下げていき、6,900円に戻したところ、再びリクエスト入るようになったのだとか。
「クルマごとに適正なシェア料金があるので”実験”をするのはおすすめです。」
4:”近くで割引”は効果がない !?
シェア料金に関する実験結果は他にもある。Anycaのクルマでよく見かける、あの割引の話しだ。
「Anycaの受け渡しは新宿や渋谷が多いのですが、自宅最寄り駅の地下鉄有楽町線の平和台駅まで取りにきてくれたら500円割引というプランを試してみたんです。しかし、割引があるとないのとでは大きな差はありませんでした。特に、私のi3は”狙い撃ち”でリクエストが入るクルマ。少し遠くの方でも受け取りに来てくださるんですよね。結局、ドライバーがそのクルマをシェアすることを検討するところまでいかないと割引は意味がないんです。」
さらに、AnycaのUI(ユーザーインターフェース)上の理由からも割引の効果は薄いのではないかと考えている。
「ドライバーはAnycaで乗りたいクルマを検索する時に、検索画面で値段の上限を決めます。すると、例えば8,900円でシェアしているクルマのプロフィール文で『近所まで取りに来てくれれば1,000円オフします』と書いても、7,900円を上限にして検索したドライバーの検索結果には引っかからないんですよ。料金項目は8,900円で登録されていますから。」
なるほど! 本文に書かれた安易な割引プランはシェアする動機づけにはならないということですね。
料金割引は本文ではなく料金設定の項目に打ち込む。勉強になります!
5:アピール文と写真は工夫するほど効果がある
では、今度は実験の結果、効果があったものを教えてください!
「見出しの文言と写真。この2つは効果がありましたね。様々な文言を試しましたが、見出しに『EV時代到来!』と書いたらPV(ページビュー)が上がりました。『EV』のようにニュースなどでよく耳にするフレーズを入れるとタップしたくなるのかもしれません。クルマの写真ですが、Anycaではほとんどが、クルマ全体がわかる写真を一枚目に設定しています。しかし、私のi3は特徴的な内装を一枚目にしています。シートの色がオシャレですし、何より目につきやすいようです。」
たしかに、i3の未来を感じさせるデザインは目に止まるかも。クルマがもっとも輝く写真を設定するのは効きそうだな……。
6:オーナーにはこれを試してほしい
以上のように、Anycaオーナーとして数多くの実験を試みてきた岩村さん。すべての実験結果が未来のオーナーにとって有益な情報になっているはずだ。
そんな岩村さんの体験を、未来のAnycaオーナーに向けたアドバイスとしてまとめると以下になる。
1:ドライバーが”狙い撃ち”したくなる車種を選べ
→電気自動車や、型落ちでも希少な輸入車など、そのクルマに乗りたい人がいるクルマがおすすめ
2:料金は初期設定しか見られないと思え
→本文に書いた「ご近所まで取りにきたら◯円引き」「◯kmなら●円引き」などの割引は目に止まりにくい
3:プロフィール一枚目の写真を差別化せよ
→タップする最重要ポイント。クルマの全体像が最適なプロフィール写真とは限らない。個性的な内装ならば内装を1枚目にするのもアリ
最後に:Anycaを始めてから気づいた価値
そんな試行錯誤を繰り返してきた岩村さんだが、実はAnycaを始めて最もよかったことを聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。
「ドライバーさんとの出会いですね。また、シェアを始めた結果、幸運にもAnycaの運営の方ともお会いすることもできたんです。」
岩村さんがシェアを開始してまだ間もないころ。ライターをしているという30代男性が恋人とのドライブ用にi3を受け取りにきた。
「返却後、Anyca談義で盛りあがり、30分以上家の前で立ち話ししちゃって。その方はAnycaの運営の方と知り合いだったみたいで、『そこまで色んな実験をされているのなら、運営の方も面白がってくれると思います。ぜひ会ってみませんか?』と提案があり、後日飲みに行ったんです。」
こうした偶然も、i3という個性的なクルマを持っていたからこそ経験できたと岩村さんは振り返る。
「他にも、ドライバー利用してくれたベンチャー企業の社長さんとも話が盛り上がって飲みに行ったりもしました。返却後の雑談で、私が携わっているエネルギー業界のことに興味を持ってくれたんです。これもAnycaとi3がなければなかったもの。当初はクルマの維持費を賄うのを目的にしていましたが、意外な出会いがあることで次はどんな人が来るんだろう?と一回一回のシェアを楽しむようになりましたね。これこそがAnycaの醍醐味です。」
そんな岩村さん、Anycaの他にもシェアリングエコノミーに積極的にかかわっている。
たとえば、自宅の空き部屋。将来子ども部屋として使う予定だが、今は使っていないため、外国人留学生に貸し出すことで寮費をもらうサービスに登録しているというのだ。
「英会話教室に通わせなくとも、外国人と子供が気軽に話せる時代になっているんです。しかも、それをお金をもらいながらできる。私はサラリーマンですが、一方で今は個人の時代。サラリーマンでも、いろいろなサービスを積極的に活用して、意外な出会いを楽しめる環境が整っているのです。Anycaはその意味で私をより行動的にしてくれたサービスだと思います。」
<取材・文/鈴木GO太郎>
鈴木GO太郎…ライター・編集者。出版社勤務を経て、2015年フリーに。現在はビジネス誌やネットニュースの編集を行う。専門分野は、自動車、不動産、地理。特に自動車についてはAnycaのような「新しいカービジネス」が専門分野